元旦会のご挨拶「老いに向かう」

慶賀新年 2013年
 高齢化社会が、急速に進んでいます。
2012年12月30日付上毛新聞の記事によれば、県内の人口は現行199万2556人から2035年には169万9000人に減少し、65歳以上の人口比も4人に1人の比率から3人に1人にと、より一層の高齢化が進むことが予測されます。
 これから「老いに向かう」私達にとって、どう老いを生きていくかを考えていくことが、大切なのではないでしょうか。
 宗祖親鸞聖人は、承元の法難(念仏弾圧)によって、35歳で越後(現上越市)に流罪となりました。ご赦免の後、43歳でご家族と共に関東の地に赴かれ、常陸の国(現茨城県)で稲田を中心に教化執筆に励まれます。やがて、63歳の年に京都上洛の決意を固めます。聖人の晩年は、お念仏のみ教えを後世に伝えるための精力的な日々であったと思われます。例えば、「正像末和讃」85歳、「唯信鈔文意」85歳、「尊号真像銘文」86歳のご文があり、88歳まで執筆を続けられたようです。
 90歳ご往生の折には、
「世事をまじえず ただ念仏して息絶え終わんぬ」
と文書に残されておりますように、往生の間際まで、しっかりとした意識を持っていらしたと思われます。
 聖人のような強靭な精神を持つことはできませんが、私達も何か目標を持つことによって、老いを超えていく生き方が見いだせるのではないかと思います。
 日野原重明先生(聖路加国際病院名誉院長)は、百歳記念として出版された『いのちを育む』の著書で、
「これからの65歳以上の老人は、15歳~64歳までの生産年齢人口世代の世話になるのではなく、積極的に社会活動に携わり、医学の進歩とセルフケアに努めることによって、社会の生産力として、健康で生き生きとした人生を送らなければなりません。」と書かれています。
 また、高齢化社会の現代、70歳まで生きるのも稀なことではなく、むしろ百歳を古稀として、7掛け人生を歩むことが、妥当ではないか。そして、「75歳になってからでも、自立した心で勇気をもち、夢を追って行動する」という『新老人』を提唱されております。
 7掛けの人生ですから、今60歳の方は42歳と考えて生きるということでしょう。こうした考えで人生を歩めたら、精神的に自立して、大いに夢を描き老いに向けて積極的に歩んでいくことができるのではないでしょうか。
 親鸞聖人の晩年の積極的な人生に学び、お念仏の声高らかに生き生きと歩む年にしたいものです。
                                    合掌